軽貨物ドライバーとして事業を営んでいくにあたって、税金関係のことが分からないという方も多いのではないでしょうか。
税金は支払いを忘れていると延滞税を課せられることもあるため、理解した上で納めたいですね。
まずは軽貨物ドライバーが支払うべき税金に、どんな種類があるのかを確認していきましょう。
目次
●支払う税金は主に車両と確定申告の税金に分かれる
●車関係に掛かる税金
○自動車税
○自動車重量税
●所得税
●消費税
○2023年10月から開始のインボイス制度に注意!
●住民税
●個人事業税
●白色申告と青色申告
●青色申告は開業届と青色申告承認申請書が必要
●青色申告のメリット
○青色申告の控除額は最大65万円
●社会保険料控除
●国民健康保険や国民年金、国民年金基金
●iDeCoも控除の対象
●生命保険や地震保険なども控除の対象
●①会計ソフトを利用する
●②マイナンバーカードを発行しておく
●③領収証や支払証明書はこまめに管理する
■軽貨物ドライバーが支払う必要がある税金
軽貨物ドライバーとして働いていく場合、どのような税金が発生するのでしょうか。
個人事業主として開業すると、サラリーマンのように年末調整が行われないので税金を意識して仕事をしなければなりません。
そのため税金の種類を知った上で稼働していく必要があります。
●支払う税金は主に車両と確定申告の税金に分かれる
軽貨物ドライバーが支払う必要がある税金には大きく分けて2つの種類があります。
車両に関する税金
確定申告に関する税金
これらは同じ税金ですが、支払うタイミングや支払い金額が異なってきます。
●車関係に掛かる税金
軽貨物ドライバーとして稼働する際の必須である軽貨物車両に掛かる税金をみていきましょう。
車両に発生する税金は2つあります。
○自動車税
自動車税は車両の排気量に応じて課せられる税金です。
排気量だけではなく、車の種類や新車登録から経った年月で税額が異なってきます。
自動車税は車検証に記載されている住所宛に送付されます。
毎年5月31日までに納付する義務がありますので、期日が近くなっても振込用紙が届かない場合は最寄りの運輸局まで問い合わせてみましょう。
車検証の住所変更をしたい場合も運輸局に申請することで変更可能です。
○自動車重量税
自動車重量税は自動車税とは異なり、車検の際に一緒に支払う税金です。
新車登録から初めの車検は3年後で、そのあとは2年に1度車検があります。
新車登録から初回の車検:3年後
2回目以降:2年後
自動車重量税は車検のたびに支払う形になります。
軽貨物車両の自動車重量税は一般車両よりも安い
軽貨物ドライバーで使用する軽貨物車両は自動車重量税の中では「自家用車両」「事業用車両」に分類されます。
重量が重くなればなるほど税額も上がりますが、同じ重さの一般車両よりも税額が優遇されています
車両総重量 | 自家用 | 事業用 |
〜1,000kg | 3,300円 | 2,600円 |
〜2,000kg | 6,600円 | 5,200円 |
~2,500kg | 9,900円 | 7,800円 |
〜3,000kg | 12,300円 | 7,800円 |
〜4,000kg | 16,400円 | 10,400円 |
〜5,000kg | 20,500円 | 13,000円 |
〜6,000kg | 27,500円 | 15,600円 |
〜7,000kg | 28,700円 | 18,200円 |
〜8,000kg | 32,800円 | 20,800円 |
事業用車両として黒ナンバーを取得することで、事業用の税額が適用されます。
☆黒ナンバーを取得する方法についてはこちら☆
■確定申告関係に掛かる税金
軽貨物ドライバーが支払うべき税金には、所得に関する税金もあります。
サラリーマンならば会社が年末調整を行いますが、個人事業主の場合は自分で確定申告を行い、自分の所得や経費を税務署に申告します。
確定申告は1月~12月までの所得や経費を計算し、毎年2月16日~3月15日の間に税務署へ申告を行います。
申告後に課税金額が算出されて、税額が決まります。
どんな種類の税金が発生するのか、詳しくみていきましょう。
●所得税
所得税は収入が多くなればなるほど、課せられる税額も高くなります。
税額は確定申告で申告する課税所得をベースに算出されます。
課税所得とは「収入」から「経費」を引き、さらにそこから「控除分」を引いた分になります。
収入-(経費+控除分)=課税所得
つまり経費や控除分を上手に申告すれば、課税所得額が少なくなります。
軽貨物ドライバーの代表的な経費を下記にまとめてみました。
ガソリン代
配送の際に使用する資材
台車などの購入費
作業着、手袋などの購入費
賃貸で駐車スペースを借りている場合はその賃料
コインパーキング費用
車検、車の整備費、自動車税
雪用のチェーン、スタッドレスタイヤ
会計ソフトやスマホのアプリのナビなど
高速道路使用料金
軽貨物車両のリース代
軽貨物車両の購入費(ローンでも一括購入でも減価償却の対象)
軽貨物ドライバーが確定申告で計上できる経費に関してはこちらのページで詳しく説明しています。ご参照下さい。
※客観的に聞いて、誰もが頷く事業継続に必要な支出が経費です。
●消費税
スーパーやコンビニなどで商品を購入する際に発生する「消費税」。
普段の生活にも馴染みの深い税金ですが、軽貨物ドライバーとして個人事業主になった際には課税売上高に対して消費税を収める必要がでてきます。
個人事業主には事業者免税点制度が適用されます。
この制度は課税対象売上高が1,000万円以下の場合、消費税を納めなくても良いとされています。
しかし注意していただきたいのが「インボイス制度」です。
インボイス制度により、売上高が1,000万円以下でも消費税を収めた方が良い場合がでてきます。
○2023年10月から開始のインボイス制度に注意!
2023年10月からインボイス制度が開始されます。
インボイス制度は正式名称を「適格請求書等保存方式」と呼びます。
適格請求書とは、インボイス制度に則った請求書で、既に消費税を国に収めている課税業者にとっては重要になります。
事業の取引を行う中で、取引が何回も行われるとその都度消費税が課税されます。
そこで何重にも消費税が掛かからないよう、仕入税額控除という控除を使うことができます。
もしあなたがインボイスに登録をしていないと、取引先の企業がこの仕入税額控除が可能な適格請求書を発行できなくなってしまいます。
そのためインボイスに登録していない軽貨物ドライバーとは取引を行わない、という会社も出てくる可能性があります。
理由としては至ってシンプルで、一次受け(弊社のような会社)がインボイスに登録していない軽貨物ドライバーへ支払った消費税は国からは認められず、消費税を支払っていても支払ったことを証明できず、発注事業者(SG)はこれまでインボイス未登録者(軽貨物ドライバー)に支払っていた消費税分を国にも負担することになるからです。
※つまり二重課税の様な現象が発生することになります。
軽貨物ドライバーとインボイス制度に関しては、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひご参考下さい。
●住民税
住民税は都道府県税+市民税を足した地方税で、前年度の収入に応じて税額が算出されます。
サラリーマンの場合、住民税は毎月給与から差し引かれますが、個人事業主の場合は6月,8月,10月,1月の4回に分けて納税します。
住民税は全ての売上である「収入」から経費と控除を引いた「総所得」をベースに納税額が決定します。
後述しますがiDeCoや国民年金基金、生命保険などの控除をうまく活用することで、住民税の金額を抑えられる可能性があります。
●個人事業税
個人事業税は個人事業主として事業を行っていると課せられる税金です。
軽貨物ドライバーの場合は5%の個人事業税が発生します。
しかし個人事業税は収入から経費を引いた金額が290万円以下であれば、個人事業税を納める必要はありません。
青色申告した場合は「青色申告特別控除」の65万円は個人事業税の控除対象にはなりません。
■確定申告で支払う税金はさまざまな方法で節税が可能
実際に事業を開始し、事業売上を計算してみたら思った以上に税金が高くて驚いてしまうことがあります。
そんな時は「経費」と「控除」の内容を再確認して課税所得が減らせないか見直してみましょう。
これらをきちんと理解した上で確定申告を行うことにより、節税できる場合があります。
「経費」にしたり「控除」が申請出来るものは無いか、もう一度確認してから確定申告を行いましょう。
●白色申告と青色申告
確定申告には主に3つの方法で申告を行います。
単式簿記の「白色申告」
簡易簿記の「青色申告(10万円控除)」
複式簿記が必要な「青色申告(65万円控除)」
白色申告は確定申告の中で最も簡単な形式で申告が可能です。
確定申告に掛かる事務手続きを少しでも減らしたい方におすすめです。
しかし軽貨物ドライバーは可能であれば青色申告を行った方がさまざまな節税のメリットがあります。
●青色申告は開業届と青色申告承認申請書が必要
確定申告を青色申告で行う場合、開業届の提出と青色申告承認申請書を最寄りの税務署への提出が必須です。
軽貨物ドライバーの場合、黒ナンバー車両で配送業を行います。
運輸局へ貨物軽自動車運送事業経営届出書を提出し、その後に軽自動車検査協会で黒ナンバーを取得することになりますが、その際に忘れずに最寄りの税務署への開業届及び青色申告承認申請書も同時に手続きをする必要があります。
青色申告を行うことで、どういったメリットを受けられるのでしょうか。
●青色申告のメリット
○青色申告の控除額は最大65万円
青色申告のメリットは「青色申告特別控除」を受けられることです。
控除額は最大65万円です。
軽貨物ドライバーは必要な設備や資材以外では経費を計上しにくい職種でもあります。
そのため確定申告の方法を青色申告にすることで、最大65万円の控除を受けられることは大きなメリットです。
※ただし、青色申告のデメリットとしては、白色申告の様な簡単な形式ではないので、簿記などの知識がないと難しい場合もあります。しかし、今はfreeeやマネーフォワードなどの優れた会計ソフトが月1,000円程度で利用可能で、そのような会計ソフトを使用し、少し簿記を勉強すれば青色申告は可能です。知識は財産になりますので、簿記の勉強はお勧めいたします。
●社会保険料控除
確定申告の際に、経費以外にも社会保険料控除を使うことによって節税が可能です。
社会保険料控除は下記のものが対象です。
国民年金保険料
厚生年金保険料
雇用保険料
健康保険料
介護保険料
国民健康保険料(保険税)
後期高齢者医療保険料
年金基金の保険料
軽貨物ドライバーの場合は個人事業主となるので「国民年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」「国民健康保険料(保険税)」「年金基金の保険料」が対象になることが多いでしょう。
●国民健康保険や国民年金、国民年金基金
個人事業主になると、国民健康保険と国民年金を納めることになります。
これらの2つの保険料はすべて社会保険料控除として確定申告で申告できます。
また老後の備えとして国民年金がありますが、国民年金の支給額は厚生年金と比べると少なくなっています。
これを解消するには「国民年金基金」があります。
国民年金基金も社会保険料控除となるので、将来に備えつつ社会保険料控除として活用できる節税対策です。
国民年金基金は任意加入の年金制度で、掛け金も自分で選んで加入することができます。
収入が不安なときも支払いの一時停止が可能なので、節税対策を考えている方におすすめの年金制度です。
●iDeCoも控除の対象
今話題の個人型確定拠出年金iDeCoも小規模企業共済等掛金控除という控除対象になります。
個人型確定拠出年金iDeCoも掛け金を積み立てた際に、全額が控除となります。
これにより、所得税と住民税を節税する効果があるので所得が多くて気になる方は検討されてみても良いかもしれません。
●生命保険や地震保険なども控除の対象
生命保険や地震保険なども控除の対象となります。
しかしこれらの保険は掛け金が全額負担になるわけではありません。
加入する保険の種類と掛け金から控除の金額が算出されます。
生命保険料控除の場合、一般的な生命保険と個人年金保険で最大5万円ずつの合計10万円が控除されます。
また地震保険の場合は所得税で最大50,000円、住民税で最大25,000円の控除が受けられます。
生命保険や地震保険に加入している方はしっかり申請しましょう。
■少しでも節税するために普段から心がけたい3つのポイント
確定申告は1年間の収支を計算しなければなりませんが、それを一気にやろうとすると大変な作業量になります。
確定申告の時期に困らないように、普段から心がけておきたいポイントをご紹介します。
●①会計ソフトを利用する
昔は全て手作業で確定申告の事務処理を行っていましたが、最近はオンラインでの申請も簡単です。
会計ソフトのクラウドサービスが充実し、初心者にもわかりやすいものが出ています。
また、クレジットカードや金融機関の口座とも連携が可能なので、自動的に計上されたものを簡単に勘定科目を選択して、計上が可能となります。
また先ほどご紹介した青色申告の65万円控除も、「e-taxでの申告」もしくは「電子帳簿での保存」を行っていないと控除額が55万円になってしまいます。
控除額に10万の差があるので、確定申告は会計ソフトを使って行うのがおすすめです。
e-taxでの申告のためには、PCに接続するICカードリーダーやカードを読み込みに対応したスマートフォンなども別途必要となりますが、直ぐに元が取れると思うので、先に解説した経費として計上し取得することがお勧めです。
●②マイナンバーカードを発行しておく
個人事業主でさまざまな手続きを行う際に、マイナンバーカードを発行しておくと非常に便利です。
発行する際に「利用者証明用電子証明書」「署名用電子証明書」が利用できるように設定しておくと確定申告が自宅で出来るようになります。
マイナンバーカードがあれば、役所に行く必要があった手続きが自宅のオンラインで完結出来ることがあるのです。
開業の際にもマイナンバーカードがあれば、ご自宅にいながら手続きが完了しますので配送業に集中したい人にもおすすめです。
※①に説明した「e-taxでの申告」をするためには、マイナンバーカードが必要となります。
●③領収証や支払証明書はこまめに管理する
経費になりそうな領収書や保険料の支払証明書などは必ず残しておきます。
支払った領収証はできれば月単位でファイルなどに保存しておくと、いつ何を買ったかわかりやすいでしょう。
領収書などは一度紛失してしまうと再発行が難しいので、事業に関する証明書なども大切に保管しておきます。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
軽貨物ドライバーを事業として営んでいく上で発生する税金について紹介しました。
支払う税金は「車両に関する税金」と「確定申告で発生する税金」の2つが大きい出費となります。
税金は滞納すると延滞税が発生するだけではなく、最終的には口座の差し押さえなどにもつながってしまいます。
2023年10月からはインボイス制度も開始されるので、難しくてよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
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