「インボイス制度が開始される」と聞いたことはあるけれど、自分には関係ないと思っていませんか?
人によってはインボイス制度に登録しておいた方が良い場合もあります。
関係ないと思っている方も、関係あるのか分からない方も、インボイス制度について詳しく知っておけば制度が始まってから困ることも無いでしょう。
軽貨物ドライバーとして働いている方はインボイス制度をどうしたら良いのか、メリット・デメリットなどを交えて分かりやすく解説します。
目次
●インボイス制度で支払いが増える?
●年間売上1000万円以下の個人事業主は免税対象
●軽貨物ドライバーがインボイス制度に登録した方が良い理由
●なぜ運送会社が不利益となってしまうのか
○①配送の単価を安くするよう交渉される可能性がある
○②配送の案件を優先的に回してもらえない可能性がある
○③取引先の企業から仕事を受注できなくなってしまう可能性がある
●免税事業者のメリット
●免税事業者のデメリット
●課税事業者のメリット
●課税事業者のデメリット
●①開始3年間は2割の負担でOK!
●②仕入額が1万円未満の場合はインボイスの保存が不要
●開業届を提出する
●黒ナンバーを取得する
●インボイス登録センターで登録を行う
○①e-taxで電子申請を行う
○②インボイス登録センターへ郵送する
■インボイス制度とは
インボイス制度は2023年10月から開始されます。
正式名称は「適格請求書等保存方式」と呼ばれる制度で、インボイス制度に登録を行うと課税事業者となり消費税を国へ納める必要が出てきます。
インボイスの登録は2023年3月31日までに申請を行う必要がありましたが、2023年9月30日まで受付が延長されました。
免税事業者のままでいるか、課税事業者として運営していくかまだ迷っている人も多いと思います。
そんな軽貨物ドライバーの方向けに、インボイス制度とはどういった制度なのか、登録した方が良いのかを詳しく説明します。
■軽貨物ドライバーはインボイス制度に登録した方が良いの?
軽貨物ドライバーがインボイス制度に登録した方が良いのかに関しては、よく考える必要があります。
それはインボイスに登録を行わないと仕事の受注に影響が出る可能性があるからです。
●インボイス制度で支払いが増える?
インボイス制度はあらゆる業界に影響を及ぼしますが、実際のところあまり歓迎されていません。
理由はこれまで免税されていた消費税分を国へ納付しなければいけなくなるからです。
今まではなぜ消費税分の税金が免除されていたのでしょうか。
●年間売上1000万円以下の個人事業主は免税対象
個人事業主が消費税の納税と無縁だった理由は「年間売上1000万円以下の個人事業主は免税対象」だからです。
インボイス制度が開始されても、年間売上1000万円以下の個人事業主は免税対象のままではあるのです。
しかし軽貨物ドライバーの場合は免税事業所のままでいると、取引先がインボイスを発行することができず仕事をもらえなくなってしまう可能性があるのです。
●軽貨物ドライバーがインボイス制度に登録した方が良い理由
現在配送の仕事を運送会社から業務委託契約で受注しているドライバーの方も多いでしょう。
配送の報酬を請求するために、取引先の会社宛に請求書を発行していると思います。
実は、取引先が受け取る請求書をインボイス制度にのっとったものにしなければ、業務委託契約している運送会社が困ってしまうことになるのです。
●なぜ運送会社が不利益となってしまうのか
なぜ軽貨物ドライバーがインボイスを発行できないと運送会社が困ってしまうのでしょうか。
それは配送案件を管理している運送会社では、仕入税額控除を利用しているからです。
仕入税額控除は仕入れの際に支払った消費税から、軽貨物ドライバーへ支払った消費税の差額だけ納税すれば良いという控除です。
例)
荷主から税込3,300円で仕事を依頼される。(消費税300円)
軽貨物ドライバーへ税込2,200円で依頼する。(消費税200円)
消費税300円(1.)-消費税200円(2.)の差額である消費税100円を納税する。
本来配送案件を管理している会社は、荷主から受け取った消費税300円を国へ納税する必要があります。
しかし仕入税額控除を利用すると、軽貨物ドライバーへ支払った消費税分を差し引くことができるため納税する分が消費税100円で良いということになります。
インボイス制度が始まってからは、軽貨物ドライバーがインボイス制度にのっとった請求書を発行しないと、配送案件を管理している会社は例えドライバーに消費税を支払っていたとしても、認めては貰えず、消費税300円分を納税することになります。(つまり二重課税のような現象に至ります)
そのためあなたがインボイスを発行できない免税業者のままでいると、以下の3つのようなことが起きてしまう可能性が出てきます。
○①配送の単価を安くするよう交渉される可能性がある
軽貨物ドライバーがインボイスの登録を行っていない免税業者の場合、運送会社は上記のように仕入れ税額控除を使用することができません。
運送会社にとっては控除が使えず、支払う税金が多くなってしまいます。
支払う税金の分を補うため、免税事業主である軽貨物ドライバーへの報酬を引き下げる可能性があります。
○②配送の案件を優先的に回してもらえない可能性がある
インボイスに登録しているドライバーとそうでないドライバーがいる場合、運送会社はインボイスに登録済みの課税事業主を優先して配送案件を依頼する可能性も出てきます。
○③取引先の企業から仕事を受注できなくなってしまう可能性がある
取引している企業や業者の中には、インボイス制度に登録を行っていない業者への依頼を断るケースも想定されています。
軽貨物ドライバーとしての仕事が減ってしまう、もしくは無くなってしまうこともあるのです。
☆軽貨物ドライバーが支払う税金についてはこちらの記事をチェック☆
■免税事業者と課税事業者のそれぞれのメリット・デメリット
免税事業者のままでいるデメリットをご紹介しましたが、ケースによっては免税事業者でも問題がない場合があります。
免税事業者、課税事業者のメリットとデメリットについて比較してみます。
●免税事業者のメリット
免税事業者のメリットは受け取る報酬の消費税分が免税されることです。
軽貨物ドライバーは消費税が10%です。
免税される分、報酬が高くなります。
●免税事業者のデメリット
免税事業者のデメリットは先述したように報酬が減額されたり、依頼自体が減る可能性があることです。
しかしこれらは未知数な部分が多く、インボイス制度が始まってからでないと実際にどうなるのかわからない部分でもあります。
●課税事業者のメリット
インボイスに登録して課税事業者になると、インボイスを発行することができます。
インボイスを発行できると、既に消費税を納めている売上高1000万円以上の事業者とのやり取りがスムーズです。
●課税事業者のデメリット
大きなデメリットは2つあります。
1つ目は、経理作業が増えることです。
インボイス制度に登録し課税事業者になった場合、形式にのっとった適格請求書の発行が必要となります。
これまでの請求書に加え、下記の項目を記載した請求書を作成します。
適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」
確定申告の際にもインボイスの項目を記入し消費税分を支払うので、その分経理的な事務作業が増えることになります。
2つ目は、消費税分の負担が増えることです。
これまでは1000万円以下の個人事業主は消費税分を免税されていましたが、納税が必要になるので消費税分の所得が少なくなってしまいます。
インボイス制度は軽貨物ドライバーにとって今後の仕事や収入を左右する重要な制度です。
いきなり10%の消費税を納税するのは負担に感じる人も多いと思います。
こういった不安を解消するためにも、インボイス制度は2つの負担軽減措置を取り入れています。
■軽貨物ドライバーが利用できる2つの負担軽減措置
軽貨物ドライバーがインボイス制度で使用可能な負担軽減措置は2つあります。
●①開始3年間は2割の負担でOK!
インボイス制度は2023年10月1日から開始します。
開始より3年間は本来納税するべき税金額の20%のみを納税すれば良いという軽減措置が行われます。
例えば、その年の売上高が400万円だった場合、通常では40万円を納める義務があります。
しかし負担軽減措置の期間中は40万円の20%が適用されて、8万円を納めることになります。
●②仕入額が1万円未満の場合はインボイスの保存が不要
仕入額が1万円未満の場合はインボイスの保存が不要になります。
これは「 基準期間における課税売上高が1億円以下である事業者」「特定期間における課税売上高が5000万円以下である事業者」が対象となります。
合計額ではなく1回の取引につき1万円未満だとインボイスの保存が不要です。
この特例は令和5年10月1日~令和11年9月30日までの6年間有効です。
■軽減措置を利用するには早めのインボイス申請が必要
現在インボイス申請の期限は2023年9月30日までとなっています。
2023年10月1日からインボイス制度が施行されますので、これらの軽減措置は2023年9月30日までに登録を行った課税事業者が対象となります。
申請が遅れてしまうと、軽減措置を利用できなくなってしまいます。
軽貨物ドライバーの方も、早めにインボイスの登録手続きを行っておきましょう。
■インボイス制度に登録する方法
インボイス制度に実際に登録するにはどのような手続きを行ったら良いのでしょうか。
軽貨物ドライバーとして開業しようと思っている方は下記を参考に手続きを進めてください。
●開業届を提出する
インボイス制度を申請する場合、開業届の提出が必要です。
開業届の提出は管轄の税務署で行うことが出来ます。
開業届は開業したい日から1カ月以内に行います。
マイナンバーカードを持っていれば、自宅にてオンラインで開業届を提出することが可能です。
オンラインで開業届を提出する場合は、国税局が管理しているe-taxで登録を行うので、マイナンバーカードを読み取り可能なスマホやICカードリーダライタが必要です。
開業したい日程の期限が差し迫っている場合は、直接税務局で手続きを行った方が良いかもしれません。
●黒ナンバーを取得する
軽貨物ドライバーに必須の車両である軽バンの黒ナンバーを取得します。
黒ナンバーはいわゆる「4ナンバー」と呼ばれるもので、車検証の用途欄には「貨物」の記載がある車両です。
☆黒ナンバー取得の方法に関しては下記をご参考にして下さい。☆
●インボイス登録センターで登録を行う
開業が完了し、黒ナンバーの取得も行ったらインボイスの手続きを行いましょう。
インボイスの登録の仕方は「電子申請」「郵送」の2つがあります。
○①e-taxで電子申請を行う
インボイスの登録はオンライン上で完結することが出来ます。
インボイスの電子申請は国税庁が管理しているe-taxから申請可能です。
電子申請を行う際には、以下のものが必要です。
マイナンバーカード
マイナンバーカードを読み取ることが可能なスマホ及びICカードリーダライタ
利用者識別番号
電子申請が難しい場合は郵送での手続きも可能です。
○②インボイス登録センターへ郵送する
インボイスの登録は、管轄のインボイス登録センターへ所定の書類を送付することで登録を行うことができます。
所定の書類は下記HPからダウンロードが可能です。
※これらインボイスの登録申請を行うフォーマットをサポートするアプリもあります。
会計ソフトと連動しているものも多いので、これらのサービスを利用すると所定の書類を簡単に作成することができます。
例)以下のような会計ソフトでは、会員登録無しで無料で申請書作成が可能です。
完成した書類を管轄のインボイス登録センターへ郵送すると、手続きは完了です。
電子は2週間程度、書面なら1ヵ月程度でインボイスを発行する際に必要な登録番号の通知が送られてきます。
Tから始まる13桁以下の番号があなたの課税事業者としての番号です。
適格請求書を作成する際や確定申告のときにも使用しますので、大切に保管しておきましょう。
■株式会社SGは開業や事務手続きのご相談も承っております
株式会社SGは東京・千葉・埼玉・神奈川などの首都圏を中心にサービスを展開する運送会社です。
弊社スタッフは全員現場の経験を経たメンバーで構成されています。
そのため軽貨物ドライバーの方のお悩みやご相談を親身に承ります。
また開業を考えているという方もぜひご相談下さい。
SGではドライバーの方のやる気やご要望に見合った配送案件を多数保有しております。
開業に関する疑問や分かりづらい事務手続きなどを手助けする「開業サポート」も行っております。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
個人事業主の働き方にも大きな影響を与えるといわれるインボイス制度。
軽貨物ドライバーの方にとっても、登録して課税事業者になるか免税事業者のままで続けていくのか、重要な分岐点になります。
2023年10月1日からは施行が決定されているので、免税事業者か課税事業者になるのかを早めに検討しなければなりません。
インボイス制度の内容をよく理解し、メリット・デメリットを検討しながら慎重に決定する必要がありそうです。
株式会社SGでは、軽貨物ドライバーの方向けに開業に関する幅広いご相談を承っております。インボイス制度をどうしようか迷っている方も、ぜひお気軽にご相談下さい。
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